「とっぽい」という俗語は、意味がはっきり分からない人が多いようで、「Yahoo!知恵袋」とか「教えて!goo」とかいったサイトでも話題になっています。これらのサイトでは、ネット辞書を引用しつつ、一応の答えが示されています。
ネット辞書では、「とっぽい」について、「生意気である。粋(いき)がっている。」「抜け目がない。ずるい。」(大辞泉)、「きざで不良じみているさまを俗にいう語。」(大辞林)のように記されています。書籍の辞書を見ると、このほか、「おっちょこちょい。間が抜けている」(『日本俗語大辞典』東京堂)、「抜けている」(『三省堂国語辞典』第5版)などの意味を加えるものもあります。
見渡してみると、「なんだか、いろいろな意味があるらしい」と、混沌とした結論になってしまいます。もう少し整理できないでしょうか。
「とっぽい」の用例は、俗語ということもあって、新聞・雑誌などにはなかなか出てきません。私の手元の切り抜き帳には1例もありません。私の能力では、今後よほど注意して拾ったとしても、1年に10例とれるかどうかでしょう。
そこで、インターネットのウェブサイトを資料として積極的に活用します。まず、「Google」によって、「とっぽい」とひらがなで書いてあるサイトを検索します。検索結果を上位から見ていって、「文脈の分からないもの」「本人もあやふやに使っているらしいもの」を排除し、その上で、40例を抽出しました。
集まった「とっぽい」の用例を、前後の文脈によって、どのような意味で使われているか判定します。ちょうど、古典に出てくる意味の分からない語句を文脈などから判断していく作業と同じです。
たとえば、次のような文があります。
「理知的でとっぽい」があなたのPI〔=パーソナル・アイデンティティ〕だとすると、BBSのレス(返事、書き込み)では、前半を端的な論理で締めるけど、後半で「ひとり突っ込み」のギャグをかます、というやり方を常にするように心がけます。「理知的でとっぽい」性格をアピールするための方法を説いている文章です。「理知的」に見せるためには「端的な論理で締める」ようにし、「とっぽい」ことを示すためには「ひとり突っ込みのギャグをかます」というのです。
(シストラットコーポレーション・人生得する「パーソナル・アイデンティティ」= 1998.12.01)
そうすると、ここでの「とっぽい」は、「生意気」とか「ずるい」とかではありえず、また、「おっちょこちょい」「抜けている」でもなさそうです。むしろ「とぼけている」「ユーモラス」に近い意味と考えられます。
同様の例はほかにもあります。
カールおじさんなら、知っている。/明治製菓の菓子「カール」のイメージキャラクターである。/首にタオルを巻き、麦藁帽子をかぶった髭づらのおじさんである。/とっぽい、暖かな雰囲気を持つ好漢であり、販促のための強力なリーダーとなっている。この文章では、カールおじさんを「暖かな雰囲気を持つ好漢」とほめつつ「とっぽい」と言っています。この「とっぽい」も、「とぼけている」「ユーモラス」というプラスの意味で使われています。
(「寸胴鍋の秘密」=2006.07.30 11:44)
もっとも、「とっぽい」をいわゆる「天然ぼけ」や、本当に「まぬけ」な人に使っている例もあり、「とぼけている」「ユーモラス」との境界は曖昧です。これらは、「とぼけた・(ぬけている)ようすだ」と一括して差し支えないでしょう。
一方で、「とっぽい」は、「不良っぽい」という意味でも使われています。むしろ、こちらのほうが先に広まったとみられます。「とぼけた」とはまったく違う意味で使われており、人々が混乱する原因のひとつになっています。
ちょっとかなりリーゼントなとっぽい、イカしたロケンローラー気味ですが、至って真面目な最先端婦女子ですわよっ(`▽´)「リーゼント」「ロケンローラー」というファッションでも「至って真面目」ということは、見た目としては不真面目な感じを与えるファッションということになります。しかも「イカした」とあるからには、その不真面目な感じをプラスに評価しています。
(「ペテカン日記」=2007.08.05)
別の例では、矢沢永吉さんの昔のファッションを「とっぽい」と言っています。
とっぽいキャロルです。しかしかなぁーり時代を先取りしていたビック矢沢だなぁと思います。矢沢ファッションは、カールおじさんとは対極にあるもので、「とぼけた」ではありません。これも好意的な意味で「不良っぽい」と言っていると解釈されます。
(AOR アダルト・オリエンテッド・ラジオ=2005.03.28 01:01:32)
「とっぽい」を「不良っぽい」の意味で使う例は多く、しかも、上の例のように否定的ではなく肯定的な語感をこめているものがほとんどです。そのあたりを辞書の記述に示すならば、「不良っぽ・い(くて かっこいい)」とするのがいいでしょう。
40例の意味を解釈した結果、意味別の用例数としては、以下のようになりました。
(1)不良っぽ・い(くて かっこいい)……24例
(2)とぼけた・(まぬけな)ようすだ……9例
(3)その他・疑問例……7例
このうち(3)には、「Yahoo!知恵袋」の
私は関東ですが、〔「とっぽい」を〕抜け目のないという意味で使っています。などの例が含まれます。中には、一般性があるかどうか疑問のものもあり、あいまいさが残ります。
したがって、今回の調査によれば、現在のところ「とっぽい」は、「不良っぽ・い(くて かっこいい)」または「とぼけた・(まぬけな)ようすだ」の意味で使われることが多いと結論していいでしょう。このほか、個人によって、または地域によって、「抜け目がない」などいくつかの意味でも使われる、ということになるでしょう。




ところで私もこの「とっぽい」は単語としては知っていましたが、意味としては曖昧なままでしたので、今回の記事を拝読して知見を得ることができ、感謝しております。
初めてにして唯一、私がこの言葉に出会ったのは、手塚治の「ミッドナイト」という漫画の中でした。うろ覚えなのですが、女不良たちが真面目な女の子をカツアゲしてそれをスケバン(もう死語?)に得意そうに報告した後、確かそのスケバンが「トッポイねぇ」と言っていたと思います。当時辞書を引いても載っておらず、これまでなんとなく不消化のままの単語でした。
お役に立つか判りませんが、一応サンプルまでに。
[トッポイ ブラックジャック]でgoogle検索
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%9D%E3%82%A4+%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF&lr=lang_ja
コミック原作タイトル:赤ちゃんのバラード
ガセネタで振り回してしまう結果となり、本当に本当に申し訳ありません。それと手塚"治"じゃなくて"治虫"ですね。
「とっぽい兄ちゃんと、ガンのつけ合い飛ばし合い」
朝から駅でガンを飛ばしあってる不良高校生の歌でした。曲名は失念しましたが。
意味が分からない言葉を検索していてこちらに辿り着きました。
アカギという漫画の中で初めてこの言葉を知ったのですが、
舞台は戦後、裏の麻雀師(代打)をやくざたちに紹介して手数料を得ている悪徳警官に対して、久々にそのことを知ったアカギが「相変わらずとっぽいな…あのデカ」というシーンがありました。
こちらに来てなんとなく意味が分かりました。この漫画では「ワル・抜け目が無い、ずるい」という意味だったのでしょうか…。
私自身は九州出身で関西にしばらくいましたが、とぼけている、間抜けという印象がありました。
ありがとうございました。
例えば天然ボケの友人に:「自分ほんまとっぽいなー(笑)」と言ったりします。