2007年08月11日

「とっぽい」とはどういう意味か

何か月ぶりかの、ひさびさの執筆です。

「とっぽい」という俗語は、意味がはっきり分からない人が多いようで、「Yahoo!知恵袋」とか「教えて!goo」とかいったサイトでも話題になっています。これらのサイトでは、ネット辞書を引用しつつ、一応の答えが示されています。

ネット辞書では、「とっぽい」について、「生意気である。粋(いき)がっている。」「抜け目がない。ずるい。」(大辞泉)、「きざで不良じみているさまを俗にいう語。」(大辞林)のように記されています。書籍の辞書を見ると、このほか、「おっちょこちょい。間が抜けている」(『日本俗語大辞典』東京堂)、「抜けている」(『三省堂国語辞典』第5版)などの意味を加えるものもあります。

見渡してみると、「なんだか、いろいろな意味があるらしい」と、混沌とした結論になってしまいます。もう少し整理できないでしょうか。

「とっぽい」の用例は、俗語ということもあって、新聞・雑誌などにはなかなか出てきません。私の手元の切り抜き帳には1例もありません。私の能力では、今後よほど注意して拾ったとしても、1年に10例とれるかどうかでしょう。

そこで、インターネットのウェブサイトを資料として積極的に活用します。まず、「Google」によって、「とっぽい」とひらがなで書いてあるサイトを検索します。検索結果を上位から見ていって、「文脈の分からないもの」「本人もあやふやに使っているらしいもの」を排除し、その上で、40例を抽出しました。

集まった「とっぽい」の用例を、前後の文脈によって、どのような意味で使われているか判定します。ちょうど、古典に出てくる意味の分からない語句を文脈などから判断していく作業と同じです。

たとえば、次のような文があります。
「理知的でとっぽい」があなたのPI〔=パーソナル・アイデンティティ〕だとすると、BBSのレス(返事、書き込み)では、前半を端的な論理で締めるけど、後半で「ひとり突っ込み」のギャグをかます、というやり方を常にするように心がけます。
(シストラットコーポレーション・人生得する「パーソナル・アイデンティティ」= 1998.12.01)
「理知的でとっぽい」性格をアピールするための方法を説いている文章です。「理知的」に見せるためには「端的な論理で締める」ようにし、「とっぽい」ことを示すためには「ひとり突っ込みのギャグをかます」というのです。

そうすると、ここでの「とっぽい」は、「生意気」とか「ずるい」とかではありえず、また、「おっちょこちょい」「抜けている」でもなさそうです。むしろ「とぼけている」「ユーモラス」に近い意味と考えられます。

同様の例はほかにもあります。
カールおじさんなら、知っている。/明治製菓の菓子「カール」のイメージキャラクターである。/首にタオルを巻き、麦藁帽子をかぶった髭づらのおじさんである。/とっぽい、暖かな雰囲気を持つ好漢であり、販促のための強力なリーダーとなっている。
(「寸胴鍋の秘密」=2006.07.30 11:44)
この文章では、カールおじさんを「暖かな雰囲気を持つ好漢」とほめつつ「とっぽい」と言っています。この「とっぽい」も、「とぼけている」「ユーモラス」というプラスの意味で使われています。

もっとも、「とっぽい」をいわゆる「天然ぼけ」や、本当に「まぬけ」な人に使っている例もあり、「とぼけている」「ユーモラス」との境界は曖昧です。これらは、「とぼけた・(ぬけている)ようすだ」と一括して差し支えないでしょう。

一方で、「とっぽい」は、「不良っぽい」という意味でも使われています。むしろ、こちらのほうが先に広まったとみられます。「とぼけた」とはまったく違う意味で使われており、人々が混乱する原因のひとつになっています。
ちょっとかなりリーゼントなとっぽい、イカしたロケンローラー気味ですが、至って真面目な最先端婦女子ですわよっ(`▽´)
(「ペテカン日記」=2007.08.05)
「リーゼント」「ロケンローラー」というファッションでも「至って真面目」ということは、見た目としては不真面目な感じを与えるファッションということになります。しかも「イカした」とあるからには、その不真面目な感じをプラスに評価しています。

別の例では、矢沢永吉さんの昔のファッションを「とっぽい」と言っています。
とっぽいキャロルです。しかしかなぁーり時代を先取りしていたビック矢沢だなぁと思います。
AOR アダルト・オリエンテッド・ラジオ=2005.03.28 01:01:32)
矢沢ファッションは、カールおじさんとは対極にあるもので、「とぼけた」ではありません。これも好意的な意味で「不良っぽい」と言っていると解釈されます。

「とっぽい」を「不良っぽい」の意味で使う例は多く、しかも、上の例のように否定的ではなく肯定的な語感をこめているものがほとんどです。そのあたりを辞書の記述に示すならば、「不良っぽ・い(くて かっこいい)」とするのがいいでしょう。

40例の意味を解釈した結果、意味別の用例数としては、以下のようになりました。

(1)不良っぽ・い(くて かっこいい)……24例
(2)とぼけた・(まぬけな)ようすだ……9例
(3)その他・疑問例……7例

このうち(3)には、「Yahoo!知恵袋」の
私は関東ですが、〔「とっぽい」を〕抜け目のないという意味で使っています。
などの例が含まれます。中には、一般性があるかどうか疑問のものもあり、あいまいさが残ります。

したがって、今回の調査によれば、現在のところ「とっぽい」は、「不良っぽ・い(くて かっこいい)」または「とぼけた・(まぬけな)ようすだ」の意味で使われることが多いと結論していいでしょう。このほか、個人によって、または地域によって、「抜け目がない」などいくつかの意味でも使われる、ということになるでしょう。
posted by Yeemar at 04:21| Comment(10) | TrackBack(0) | 語彙一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久しぶりです。"ではの守"の記事ではレスありがとうございました。

ところで私もこの「とっぽい」は単語としては知っていましたが、意味としては曖昧なままでしたので、今回の記事を拝読して知見を得ることができ、感謝しております。

初めてにして唯一、私がこの言葉に出会ったのは、手塚治の「ミッドナイト」という漫画の中でした。うろ覚えなのですが、女不良たちが真面目な女の子をカツアゲしてそれをスケバン(もう死語?)に得意そうに報告した後、確かそのスケバンが「トッポイねぇ」と言っていたと思います。当時辞書を引いても載っておらず、これまでなんとなく不消化のままの単語でした。

お役に立つか判りませんが、一応サンプルまでに。
Posted by ハナ at 2007年08月21日 03:31
ありがとうございます。手塚治虫の『ミッドナイト』(少年チャンピオンコミックス版)を5巻まで読んでみました。ところが「とっぽい」は出てきませんでした。見落としたか、もしかすると、6巻(最終巻)に載っているのでしょうか。手元にないため、いずれ読んでみたいと思います。なお、最終話は文庫版にしか収録されていないそうなので、そちらで読んだほうがいいかもしれませんね。
Posted by Yeemar at 2007年08月31日 10:46
申し訳ございません。同時期に読み漁った手塚作品と混同していました。正しくはブラックジャックの方だったようです。

[トッポイ ブラックジャック]でgoogle検索
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%9D%E3%82%A4+%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF&lr=lang_ja

コミック原作タイトル:赤ちゃんのバラード

ガセネタで振り回してしまう結果となり、本当に本当に申し訳ありません。それと手塚"治"じゃなくて"治虫"ですね。
Posted by ハナ at 2007年09月01日 23:41
昔、「横浜銀蝿」というロックバンドのヒット曲の歌詞にありました。
「とっぽい兄ちゃんと、ガンのつけ合い飛ばし合い」
朝から駅でガンを飛ばしあってる不良高校生の歌でした。曲名は失念しましたが。
Posted by ヤン at 2008年01月08日 17:18
私の感覚では、アニメの「ルパン3世」こそ、まさに「とっぽい」のイメージにぴったりです。先生の検証を拝見しましてまして、なるほど、「ルパン3世」は、まさに「不良っぽく」て「ユーモラス」で「抜け目がない」。自分の感覚が裏付けられたような気がしました…。
Posted by ディオ at 2008年01月23日 11:48
はじめまして。
意味が分からない言葉を検索していてこちらに辿り着きました。
アカギという漫画の中で初めてこの言葉を知ったのですが、
舞台は戦後、裏の麻雀師(代打)をやくざたちに紹介して手数料を得ている悪徳警官に対して、久々にそのことを知ったアカギが「相変わらずとっぽいな…あのデカ」というシーンがありました。
こちらに来てなんとなく意味が分かりました。この漫画では「ワル・抜け目が無い、ずるい」という意味だったのでしょうか…。
私自身は九州出身で関西にしばらくいましたが、とぼけている、間抜けという印象がありました。

ありがとうございました。
Posted by tori at 2008年06月20日 13:26
とっぽい、聞いた事がなくてお客さんから初めて聞いて知りました。
Posted by yukipro at 2009年09月12日 13:57
関西人です。「とっぽい」はよく使います。関東で通じなかったので方言かもしれないと検索して偶々このページを見つけました。方言ではなかったものの、(1)不良っぽいは初耳でした。私たちは可愛がる意味でやんわりと、(2)まぬけな人の意味で使います。どちらかと言えば年上や年配のひとには使いません。
例えば天然ボケの友人に:「自分ほんまとっぽいなー(笑)」と言ったりします。
Posted by momoka at 2009年10月17日 14:32
『とっぽい』ですが、自分らの場合は「いかつい」に近い感じで、更に「(周りの…時代の…)先に行っている」「上にいる的」がある様なニュアンスで使いますね。英語の「トップ」からきていると思います。
Posted by 水牙 at 2010年04月29日 05:34
わたくし宮崎県育ちですが、とっぽい=とろい、まぬけの意だったかと。数年前のTVで、歌手の河村隆一さんが若いころの自分のファッションをとっぽかった(最先端でとんがってた)の意味で使っていて、驚いた覚えがあります。地方によって意味が違うのですね。
Posted by お花畑 at 2012年07月30日 22:59
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/50993752

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。