2006年03月25日

「さようなら」の語源と意味

以前に、「「さようなら」の意味」という文章を書きました。これは、「さようなら」というせりふを、言った人と聞いた人とが、別々の意味で考えていた、という話を書いたのです。

ところが、その後、私のブログを訪れる人がどういうキーワードを手がかりにしているかを調べてみると、「さようなら」「意味」ということばをきっかけにやって来る人が少なくありませんでした。これは、おそらく「さようなら」の語源が知りたいということでしょう。そして、私の文章を読んだ人は、「さようなら」の語源について何も書いていないので、がっかりしたでしょう。

それでは申しわけないので、「さようなら」の語源と意味について書いておきます。

「さようなら」とは、「そうなら、そうならば」ということです。「それでは」「では」「じゃあ」などと同じで、それまでの話を打ち切り、話を変えるときに使うことばのひとつです。「それでは、これで失礼します」とか、「さようなら(ば)、あした会いましょう」とか言うところを、全部言わずに、初めのところだけで止めているのです。

これは、じつにかんたんなことで、わざわざ調べるまでもないことです。おそらく、「さよう」ということばは、やや古いので、聞いたことのない若い人が多くなっているのだと想像します。

「さよう」は、「そう」のていねいな言い方です。「そうですか」をていねいに言えば「さようですか」となります。「そうならば」「そうなら」をていねいに言えば、「さようならば」「さようなら」になります。難しくはないでしょう。

ところが、ほかのホームページを探してみると、「さようなら」の語源・意味について、私には賛成できない説を述べている人が少なくありません。たとえば、

・平安時代の女性のことば「さようならず」(そのようにはなりません)から
・「太陽とともに生活しているならば、ご気分がよろしいでしょう」という意味
・「そうならねばならぬのなら」という、あきらめのことば(これは須賀敦子『遠い朝の本たち』に、リンドバーグ夫人の解釈として載っているそうです)

などです。

また、作家の田中英光も、「さようなら」という作品の中で、〈さようならなくてはならぬ故、お別れしますというだけの、敗北的な無常観に貫ぬかれた〉ことばだと述べています(「青空文庫」の「さようなら」より)。これは短編小説なので、学問的に批判するのはおかしいかもしれませんが、正解でないことはたしかです。「さようなら」が無常観を感じさせることばなら、「じゃあ始めよう」「それでは始めましょう」「さようなら開始いたしましょう」の「じゃあ」「それでは」「さようなら」も無常観を感じさせるはずですが、そんなことはありません。

こういったいろいろな説が出てくるのは、ことばの意味を、客観的な手がかりによって考えるということを、学校で教えていないせいでしょう。語源をあつかったテレビ番組を見ていると、たいていは、想像もしなかったような昔の話が元になっているような例ばかりが紹介されています。たしかに、古い出来事が元になってできたことばはたくさんあります。しかし、他のことばと比べたりして、論理的に語源を推測することができることばもあるのです。

「さようなら」の場合、「さようですか」「さようなことは」などのことばと比べれば、「さよう」は「そう」と同じであることがすぐ分かります。さらに、「それならまたあしたね」「それじゃあまた今度」「それでは失礼」などを思い浮かべれば、「さようなら」以外にも、それまで続いていた話を打ち切って、話を変えるためのことばが、たくさんあることが明らかでしょう。

語源を考えるとき、「何か隠された物語があるのではないか」と、空想をふくらませるのではなく、まずは、近くにある材料から考えてみるべきです。そうすれば、うまく答えが得られることもあります。
posted by Yeemar at 21:46| Comment(12) | TrackBack(0) | 語彙一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めましてイチと申します。
僕も『さようなら』と『意味(正確には語源ですが)』で検索してこちらに辿り着いた1人です。
しかしながら、僕が知りたかったのは『さようなら=そうならば』の先の部分なのです。
さようならを感じで書くと『左様なら』になりますよね。では左様の『左』とは何を指し示しているのでしょうか?それが知りたいのです。

少々昔のページへの書き込みなので僕のカキコを見付けて頂けるかどうか分からないんですが、もし何か御存知でしたら教えてやって下さい。
Posted by イチ at 2006年11月12日 23:42
申し訳ありません。
『感じ』ではなく『漢字』でした。
Posted by イチ at 2006年11月12日 23:45
解決しました。
お騒がせいたしました。
Posted by イチ at 2006年12月10日 00:03
「それじゃ」というのは別れの言葉として使われることがあると思いますが、これなどは「さようなら」と全く同じ使われ方をしていることになりますね。
関西弁だと「ほなな〜」と言います(「ほな」は「それなら」の意)。

時代や地域によらず、同じ変形の仕方をしているものと考えられます。
Posted by Iwacky at 2007年02月04日 15:34
さようならばこれにて失礼いたす、の、省略による敬語表現ですね。
Posted by 時代劇で at 2010年11月25日 10:05
左様ならば(の左とは...)

今日が皆にとって良き日であったのなら
明日もきっと良き日であることでしょう
その良き日にまたお会いしましょう。

が、私にとっての左様でございます。
Posted by mino at 2011年01月29日 21:41
イチさん違う意味を教えてください





Posted by ばんばん at 2013年03月13日 10:24
さよならはいつからはじまったのですか。      
Posted by ムンドゥス at 2013年03月14日 09:53
左様なればの「左様」は会合に及んだ用件を指し
それが終了したことを告げるために「左様なれば」と切り出しているのです

よね?
Posted by JIN at 2013年04月06日 19:34
左様の意味は 左記と一緒やろ 左記の様なら ちゅーたら長いで 左様ならてゆーんとちゃうの?
Posted by モロパパ at 2013年04月08日 14:05
私が聴いた話しだと
「左様ならば是にて失礼致します。」
を省略した物との事でしたが
他にも色々な説があるんですね。(^_^;)
Posted by 人形 at 2014年01月15日 05:22
こんにちは と さようなら の語源
聞いた話で うろ覚えの話ですが。

お城?の門衛の交代時の挨拶を江戸町民が面白がって真似したとの事。

A・こんにちは お勤め御苦労様に御座る 交代の時間で御座る

B・さようならば、これにて失礼つかまつる。

大声でこの掛け声を発していた事から
こんにちは
さようなら
が残った? 
きっとネットで探せば 出て来るのでは?
Posted by リュウ at 2014年07月31日 15:42
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