2006年03月24日

「e」の流行

「eなんとか」ということばが、やたらに流行していた時期がありました。今は、多少落ち着いたろうと思います。ここでいう「e」とは、「electronic」の略として使われているものを指します。

最も広まったのは「○eコマース〔=商業〕」ということばではないでしょうか(注、○×印は、インターネットの「デイリー新語辞典」にあるかないかによる。以下同じ)。早い話が「電子商取引」のことです。私の手元では次の新聞記事が最も古い例です。さらに古い例は当然あるでしょう。
 電子情報ネット上の商業活動を「eコマース」と呼ぶのにならい、情報ネットを利用した暮らしは「eライフ」とも呼ばれる。(「朝日新聞」1999.12.06 p.1)
これによれば、「×eライフ〔=生活〕」ということばも一部にあったようです。

「eなんとか」ということばは、手元の例では「×eエコノミー〔=経済〕」が最も古い例です(「eメール」などはさらに古いはずですが、用例として採っていません)。
中谷〔巌〕 数年と言わないで、3年後には間違いなく日本経済は本格回復すると思います。なぜかというと、いま情報革命というすごく大きな波が日本の国の波打ち際まで来ているわけです。ただ、まだ来てないんですよ。いままですごい規制があって、私が「e−economy」と呼んでいる経済が、まだ花開いてないんですよ。(「週刊読売」1999.08.22・29 p.40)
この発言からは、中谷巌氏が言い始めたことばのようです。「eコマース」よりも広い概念でしょう。

似た意味で、「×eトレード〔=商業・取引〕」、および、「○eビジネス〔=業務〕」というのもありました。
 ジャーナリスト・東谷暁氏が〔『インターネット・バブル』の〕読後感を語る。
eコマースeビジネスeトレードが二十一世紀のキーワードだと言われますが、もう少し冷静に見る必要があります。〔下略〕」(「週刊文春」2000.01.27 p.66)
「eビジネス」については、手元に他の例もあります。

もう少しふだんの生活に近いことばとしては、「×eコンビニエンス」「○eチケット」というのがありました。
 宅配専門で店舗のないスーパーも誕生する。今月二十五日から、東京都港、大田、目黒、品川の四区で営業を開始する「eコンビニエンス」の「おかいものねっと」だ。(「朝日新聞」2000.04.15 p.25)

 出井〔伸之ソニー社長〕 ネットバンキングをやりたいとか、So−netをやっているとか。そういえば、こんどチケットセゾンのインターネット版でeチケット事業を始めますが、広報担当にも会社を設立するという発表はだめだと言いました。(「週刊朝日」2000.??.?? p.??)
あとの例は、2000年の記事ということだけ分かっていますが、不注意により、いつの号の何ページかは分からなくなってしまいました。

シンガポールでは、「×eタウン〔=街〕」ができたそうです。
 シンガポール北部のビシャン・トバイヨ区。区役所が一月末、仮想の街「eタウン」を立ち上げた。ホームページには街の案内図が現れる。スポーツ施設を予約できる「e登録」、公共料金を支払える「eサービス」、地元校の行事予定などを提供する「e学校」など、頭に「e」のつくアイコンが九つある。
 シンシア・リー区長は「夜間でもサービスを提供できる」。中でも「eビュー」は、駐車場数カ所に設置した防犯カメラの映像が見られ、「治安を向上させた」と胸を張る。(「朝日新聞」2000.03.04 p.10)
さらには、テレビ局の広告にも「×eメディア」が使われました。
21世紀のはじまりまで、あともうわずか。TBSも、テレビやラジオの枠を超え、ひとと人とのつながりを前向きに考えた新しいコミュニケーション、〈eメディア〉に生まれ変わろうとしています。(TBS全面広告「朝日新聞」2000.03.02 p.34)
こう並べてみると、どれもみな、前世紀末に使われた例です。私がたまたま注意していたのがその時期だったということもあるでしょうが、この時期に集中的に使われた言い方だったと思います。

「デイリー新語辞典」で「e-」を検索すると、このほかにも「e」のつくことばは20以上あります。列挙すると、
e-インフォメーション、e-エアポート、e-気象台、e-コミュニティー、Eシネマ、e-ジャーナル、e-Japan、e-タグ、e-Tax、e-チェックイン、e-TBTマーク、E-ディフェンス、e-デモクラシー、e-NAVI、E爆弾(E-Bomb)、eプロキュアメント、e-文書法、e-ポリティクス、Eマーケットプレース、Eメール(E-mail)、Eメールエントリー、Eメールマーケティング、eラーニング(electronicの略でないものも含まれているようです)
これらのすべてが、今も一般的に使われているとは、必ずしも言えないでしょう。日常的によく目にすることばはどれか、また、少し注意してみたいと思います。
posted by Yeemar at 20:16| Comment(3) | TrackBack(0) | 語彙一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めてコメントします。どうぞよろしく。

「eラーニング(e-Learning)」

この言葉も、1996〜7年頃には既にあったような気がします。

「eラーニング 歴史」で検索してみたのですが、今一つはっきりしません。
http://www.netlearning.co.jp/hojin/colum/colum002.html
http://www.humanvalue.co.jp/houkoku/hvdr/vol3/hvdr_vol3_1.htm#elreki
Posted by NISHIO at 2006年03月25日 03:53
当初の私の文章では「eラーニング」がなかったのですが、あらためて「デイリー新語辞典」を検索すると、ちゃんとありました。列挙した単語の中に追加しておきました。

見出しの表記が「e-」でなかったために、検索もれが起こったものです。こういう点、紙ではない「e-dictionary」(?)は不便です。あらためて検索し直したところ、抜けていたのは「eラーニング」だけのようです。

eラーニングは、当初「WBTという言葉が一般的だった」のが、「ブレイクは、1999年の春にやってきた」(上にご紹介のあった、ネットラーニングのホームページ)とのことですね。この文章からは、「eラーニング」がことばとして爆発的に広まったのは1999年のように読めます。

1999年は、主要紙に「IT革命」の文字が初めて見える年です(翌年にこの文字が爆発的に増えます)。この風潮に乗って「eなんとか」ということばも多く目にするようになったと記憶します。
Posted by Yeemar at 2006年03月25日 04:46
「eメール」は、当初「電子メール」という表現が主流だったのではないでしょうか?その後、「eメール」になり、「メール」で定着しました。
郵便ではなく、民間会社による「メール便」など「e」の付かない「メール」との区別はどうするのか?と心配しましたが、あまりにも「eメール」の勢力が強いので、現在では特に問題なく「eメール」=「メール」となっているようです。
Posted by 道浦俊彦 at 2006年03月30日 07:39
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