2006年03月20日

食べすぎそう

NHKの連続テレビ小説(朝ドラ)の「風のハルカ」(2006.03.14 12:45)を見ていたら、次のような場面がありました。ヒロインのお父さんが開いているレストランで、客がこう言うのです。
客A おいしい。
客B また食べすぎそう。うふふ。
この客は、お父さんの料理がおいしいのだ、ということを見る人に分からせるためだけに出てきた人物です。その「食べすぎそう」という部分に耳が止まりました。

これは、私は使わない語法です。私ならば、「食べすぎてしまいそう」と言うか、「食べすぎちゃいそう」と言うか、いずれにせよ、いったん完了形にしてから「そう(だ)」をつけます。

どっちでも同じではないかという気もしますが、私は「食べすぎそう」と言わないことはほぼ確実です。そこには、何か規則の力がはたらいているように思われました。

「Google」でネットを検索してみると、「"食べ過ぎ(すぎ)てしまいそう"」が674件(重複除く、以下同じ)、「"食べ過ぎ(すぎ)そう"」が404件です。また、「"飲み過ぎ(すぎ)てしまいそう"」が559件、「"飲み過ぎ(すぎ)そう"」が412件です(2006.03.20)。どちらも、「てしまう」をつけるほうが若干多いのですが、つけない場合と比べて、それほど極端な差はありません。「てしまう」をつけると、多少言いやすくなる、といったところでしょうか。

私が「食べすぎそう」に注意を引かれた理由をいろいろと考えてみました。「すぎる」という補助動詞の性質に関係があるようです。

金田一春彦の分類によれば、「すぎる」というのは状態動詞というグループに入ります。このグループの語は、動詞の形は取っているけれども、動きを表すのではなく、状態を表すことばです。たとえば「ある」とか「できる」(可能の意)とか「(注目に)値する」とかいう単語が、この仲間です。

状態動詞は、意味の中に、時間的な要素が含まれていません。したがって、「そうだ」という、「直前」を表す語はくっつかないのです。「何かわけがありそうだ」と言えるではないかと思われるかもしれませんが、この場合の「そうだ」は「推測」を表すので、話が違います。「欠点がある」を、「×そろそろ欠点がありそうだ」とか、「彼は英語ができる」を「×そろそろ彼は英語ができそうだ」とか言うことはできません。

「○○しすぎる」もこれと同じで、動きというよりは状態を表しています。それで、形容詞(これもものごとの状態を表す)にくっついて「この服はちょっと大きすぎる」とか「この部屋は寒すぎる」とか言うことができます。

「大きすぎる」に「そうだ」をくっつけて、「このままでは、この服は大きすぎそうだ」と言うことは難しいでしょう。同様に、「このままでは、この料理を食べすぎそうだ」と言うことも(私には)難しいのだ、と考えれば、納得ができます。

ただ、「すぎる」は状態動詞であることは間違いないのですが、時間の推移を表す「てしまう」をつけて「食べすぎてしまう」と言えるところは特殊です。同じ状態動詞でも「×(欠点が)あってしまう」とは言えないのに、「すぎてしまう」は言えるのです。この違いは、「一口に状態動詞といっても、多少性格が違うものが含まれているのだ」とでも言って、今のところはごまかしておくしかありません。


posted by Yeemar at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 文法一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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