2006年02月28日

「続きまして」「したがいまして」はだめか

「ふつう体」(だ・である体)と「ていねい体」(です・ます体)の話です。文部科学省が「常体」「敬体」と言っているものですが、私は好きではありません。ここでは「ふつう体」「ていねい体」と言うことにします。

NHK放送文化研究所編『NHK ことばのハンドブック 第2版』(NHK出版)p.43-44で、「かかわりませんで」という言い方について触れています。
 「あいにくの雨にもかかわりませんで」という表現はおかしい。「〜にもかかわらず」は,一種の慣用句であるから,「雨にもかかわらず」とするか,「雨でしたが」などとする。
 「続いて」「したがって」を「続きまして」「したがいまして」と言うのも同様におかしい。
なるほど、「かかわりませんで」という言い方は、私にも標準的ではないと思われます。無意識に言うことがあるかもしれませんが、積極的には使わないでしょう。

ただ、「慣用句だから」、1つの言い方しかない、という説明はへんです。「続いて」を「続きまして」、「したがって」を「したがいまして」と言っても悪くはないはずです。

「です」「ます」を使いにくい場合というのは、たしかにあります。たとえば、叙述(ひとまとまりの出来事を述べること)の途中にはあまり使いません。「電車の中で立って本を読んでいた」をていねい体に直すと、「電車の中で立って本を読んでいました」と、最後はていねい形になりますが、一方、前の部分は「電車の中で立ちまして本を読んでいました」のようには言いにくい感じです。もし言うと、それは「電車の中で立ち上がるという動作をした、そして、本を読んでいた」と、2つのことを叙述しているように受け取られます。

「続いて」「したがって」をていねい体にしにくいのも、それが慣用句だからというよりは、叙述の途中に使われることばだからです。

しかし、「『です』『ます』は叙述の最後にしかつけない」というのは、絶対的なルールではありません。非常にていねいに言おうとすれば、途中に来ることばにも「です」「ます」を使うこともあります。

『三省堂国語辞典』は、「続いて」のように下に続くことばにも、積極的にていねい形を認める日本語辞書です。この辞書では、たとえば、
つづい て[続いて](接)〔略〕〔「続きまして」は、ていねいな言い方〕

したがっ て[(従って)](接)〔略〕〔「したがいまして」は、ていねいな言い方〕
と、わざわざ注記を添えています(第5版による。以下同じ)。「もって(以て)」の項目にも、「「これをもちまして」は、ていねいな言い方」と書いています。

なかでも特徴的なのは、「おいて(於いて)」のていねい形です。この辞書では
おきまし て[(×於きまして)](連語)「おいて」の ていねいな言い方。〔後略〕

おき ます(る)[(×於きます(る))](連語)「おける」の ていねいな言い方。
と、見出しにまで立てています。

私は、この辞書の方針を支持します。つまり、日本語には「ふつう体」と「ていねい体」という2つの文体があり、それぞれの文体によって、使われる「慣用句」は違うのです。「続いて」は、ふつう体での慣用句ではありますが、ていねい体では「続いて」と「続きまして」の2つの慣用句を使うということです。

なお、「かかわりませんで」に違和感があるのは、「ていねい体」「ふつう体」とは別のところに原因があります。これは「んで」ということばがいけないのです。もし、「ます」を取らずに、「お知らせいただいたにもかかわりませず、失念をいたしておりまして……」と言っても、日本語として不自然ではありません。ばかていねいではありますが、不自然さとは別問題です。「かかわりませんで」の場合、「ます」そのものが問題なのではなく、「ます」に「んで」が続いていることが、違和感の原因です。

『三省堂国語辞典』には、「かかわらず」の項目に「「かかわりませず」は、ていねいな言い方」と、目配りよろしく、ちゃんと書いてありました。


関連文章=「「始めまして」か「初めまして」か
posted by Yeemar at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 文法一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。初めてことばメモを訪れました。
楽しくて、次々と読みました。日本語っておもしろいですね。

ところで、私ごとですが、最近、とある試験のための教材を読んでいて、
どうしても気になることがあります。
章も段落も関係無く、あちこちに「したがって」と「したがいまして」が
混在しているのです。
私としては、試験の教材に「したがいまして」という
ていねい語が出てくること自体、非常に違和感を覚えるのですが、
間違いではないのですね・・・
ちらっと指摘してみたところ、怒り狂ったような反論が
返ってきました。「権威あるs辞書にも載っている」とかなんとか・・・

まだまだ勉強がたりませんでした。
これからもことばのメモ、楽しみにしています。
Posted by ぴょう at 2006年09月12日 09:06
「したがいまして」ということばが悪いのではなく、その用い方に、適切な場合と、不適切な場合があるということでしょう。

上で述べたのは、主に話しことばを念頭に置いていました。書きことばにする場合には、あまり冗長にならないように、「続きまして」「したがいまして」を使ったほうがいいと思います。もちろん、それも、文章の内容によります。

ぴょうさんが言われる問題点は、「章も段落も関係無く」「『したがって』と『したがいまして』が混在している」ということですね。これは、「したがいまして」という言い方とはまた別のところに問題があるわけですね。
Posted by Yeemar at 2006年09月12日 09:20
 初めまして。最近、このサイトを知り、お気に入りに追加させていただきました。関連してですが、
「○○を初めとして○○まで」というのも、いつも迷うのです。「○○を始めとして」なのでしょうか。
 あと、ついでにお伺いしたいのですが、「焼肉定食」は四文字熟語でしょうか。「一汁一菜」などとは違うと思うのですが。四文字熟語のゲームをしていて、疑問が出てきました(下記のサイトです)。
http://www.gamedesign.jp/flash/yojifla/yojifla.html
Posted by くららリズム at 2007年09月30日 00:20
従いまして。 いい言葉遣いと考えています。 とても、印象的で耳に残ります。これからも使っていきます。
Posted by イズハラ at 2011年02月06日 18:42
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