2006年02月05日

対校 木村拓哉発言

先日「やられますね、いい感じのKO。」の中で、「プロジェクトX」での木村拓哉さんの発言を引用しました。「プロジェクトXで取り上げられてる人たちって、わりとその猪突猛進型というか、……」と番組の魅力を語っているコメントです。

ところが、あとでネットを調べてみると、驚いたことに、この時の彼の発言を自分のブログなどに引用している人が少なくとも5人はいるのです。

考えてみれば、トップスターの発言ですから、多くの人が注目し、引用するのも当然です。私としては、「つい聞き逃してしまうテレビのことば」の1つとして記録したつもりでしたが、このようにあちこちで記録されているのを知ると、ちょっとがっかりします。

しかも、それらの引用文を私の引用文と比べると、どれも少しずつ違っていました。私は不安になりました。自分の聞き取り方が悪いために、発言を不正確に記録してしまったのではないかと。改めて確かめようにも、もう発言の録画は消してしまいました。

こういうときは、それぞれの引用文を比較して(対校して)、どれが元の発言を正確に伝えているかを推定する方法があります。古典作品の写本のうち、どれがいちばん原典に近いかということも、こうやって調べます。

私のものを含め6種の引用文を比較検討してみました。「わざわざそんなことを」とおっしゃるなかれ。ことは資料の信頼性に関わる問題です。

結論から言うと、「私の引用がいちばん正確だ」と胸を張っていいと思います。

1句ごとに比べてみると、私のを含めた6つの文章がすべて一致している箇所は、必ずしも多くありませんでした。たいていは、どれかが異なっています。そして、私の文章は、後に述べる1箇所を除いて多数派のほうに入っていました。まずは、妥当な聞き取りだったろうと思うのです。

相違点のうち、いくつか興味深い箇所がありました。たとえば、
VTR明けでその人たちの感想を聞く空気感とかあったじゃないですか。
の部分を、「その人達の感想を聞く…聞く期間とかあったじゃないですか」としてある引用がありました。たしかに「感想を聞く期間があった」のほうが「感想を聞く空気感があった」よりも日本語として自然です。しかし、他の引用では、みな「空気感」としてありますから、「空気感」で正解でしょう。「よく聞き取れず」と但し書きをつけた引用もありました。発言者のことばの選び方のせいで、理解が妨げられたのでしょう。

意見が分かれたのは、発言の冒頭部分でした。
プロジェクトXで取り上げられてる人たちって、
というのが、引用によって、「取り上げて、出てる人たち」「取り上げている人たち」「取り上げている人達」「取り上げてる人達」「とりあげられてるヒトたち」と、まちまちなのです。

この部分については、私の聞き取った「取り上げられてる」は多数派ではありません。「取り上げて(い)る」とする引用が3つあり、「もしかするとこちらが正しいのかも」と思いました。「取り上げる」と「取り上げられる」を聞き違えては大変です。

ただ、「取り上げて、出てる人たち」と聞き取った引用があることが注目されます。これは、元の発言が「取り上げ○○○る」のように、「る」の前に不明瞭な部分が3音節あったためではないかと推測されます。たとえば、

「とりあげえーてる」

のようなあいまいな発音ではなかったでしょうか。これが、人によってさまざまに解釈されたのでしょう。「取り上げられてる」と解釈していいのではないでしょうか。

追記
消したと思っていた録画が、じつは残っていました。従って、このように対校をしなくても、録画を見直せばよかったというオチがついてしまいました。そこで、改めて聞き直してみました。冒頭の所は「とりあげれる、てる人たち」と聞こえました。「る」の前に不明瞭な部分が3音節あった」と書きましたが、「れる、て」で3音節(3拍)になっていたわけです。「取り上げられてる人たち」の言い損ないとも、「取り上げてる人たち」とも解釈できます。(2006.02.11)
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posted by Yeemar at 04:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 音声・音韻一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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