2006年01月20日

50年前のテレビニュース

NHKエンタープライズが1990年前後に発売した「NHK THE NEWS」というビデオの一揃いがあります。NHKのテレビ放送が始まった1953年以降、毎年の重要ニュースを、1年につき1巻ごとにまとめたものです。

古いニュースを改めて見てみると、さすがは半世紀以上前のニュースで、アナウンサーのことばが今とはかなり違っています。

まず、皇室に対する敬語がじつに手厚い。
二重橋をご出門になられた〔皇太子〕殿下には、一路横浜港へと向かわれます。〔1953年〕
「あれっ、これ、戦前のニュースフィルムじゃないよなあ」とまごつきます。今ならば「二重橋を出られた皇太子さまは」と言うところです。仮に「ご出門」ということばを使うとしても、「ご出門になった」が限度でしょう。それにさらに「れる」を足して「ご出門になられた」とするのは、いわゆる二重敬語です。

この二重敬語は、「ご乗船になられます」「おはいりになられました」のように頻出します。ところが、別の箇所では、
大臣や外国使臣などと帰国のあいさつをされた殿下には、ここでメッセージをご発表になりました。〔1953年〕
とも言っています。「ご発表になられました」ではありません。つまり、二重敬語を使おうが使うまいが、どっちでもよかったのかもしれません。

一方では、ふつうの人々に対することばは、乱暴なものがときどきあります。
この水禍で、濁流の犠牲となった人々の死体が運び出されています。そのほとんどが、裸同様の姿というのも、今度の水害がいかに急であったかを物語っています。〔1953年〕
今ならば「遺体」というはずです。別のニュースでは、たとえば洞爺丸の遭難の報道で「変わり果てた死体も続々引き揚げられ」〔1954年〕のように、「死体」がごくふつうに使われています。

また、「当人が怒るのではないか」と思われる表現もあります。
〔漁民が韓国に抑留されたため〕暗い表情に包まれた村では、李ライン問題で話は持ちきり。老婆はまだ帰らぬ息子の心配で、年老いた顔にまたしわが増えたということです。〔1953年〕
画面を見ると、その「老婆」らしき人が映っています。息子の安否が分からず不安な彼女に対して、今日の感覚からすると、思いやりに欠ける言い方のような気がします。

ことばがやたら難しいのも特徴です。「はるかロンドン塔から63発の祝砲が隠々(いんいん)と轟き」〔1953年〕とか、「マニラ郊外モンテンルパで獄窓(ごくそう)生活(=監獄の中の生活)を送っていた108人の人々」〔1953〕とか、すぐに字が思い浮かばないようなことばが次々に出て来ます。

聞き手に分かりやすいことばを意識して使うようになったのは、もう少し後のことでしょう。
posted by Yeemar at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 敬語一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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